【同性カップルでパートナーに浮気をされた場合、慰謝料請求できる??】

こんにちは。
レイ法律事務所弁護士の森です。

みなさん、同性カップルが長年一緒に共同生活を送っていた時に、パートナーが不貞をして、同性カップルの関係が破綻した場合、パートナーやパートナーと不貞をした人に対し、損害賠償を請求できると思いますか?

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昨年、同性カップルの一方が不貞を行った場合に、一方及び不貞をした第三者に対し損害賠償を請求できるかという点について、宇都宮地方裁判所で判決が出ました

宇都宮地方裁判所真岡支部令和元年9月18日判決)。


今回は、パートナーの不貞で悩んでいる人もいると思いますので、「同性カップルの不貞慰謝料請求が認められた裁判~パートナーが不貞をしたことにより関係破綻~」について、裁判所がどのように判断したのか詳しく見ていきたいと思います。

 

■画期的な判決
この裁判では、同性カップルであっても内縁関係と同視できる生活関係にある場合は、内縁関係に準じて法的保護に値する利益が認められるとして、パートナーの不貞により関係が破綻したときは不法行為に基づく損害賠償が認められると判断しました。
大変、画期的な判決です。

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■損害賠償請求が認められるには

まず、パートナー及びパートナーと不貞をした第三者に対して損害賠償を請求する場合、その請求が認められるかは、不法行為に基づく損害賠償請求』(民法709条)の各要件を満たすかという問題になります。

不法行為に基づく損害賠償請求の要件
① 加害行為=「権利又は法律上保護された利益」に対する侵害があったこと
② 損害の発生
③ 加害行為と損害の発生に因果関係があること
④ 故意・過失

特に問題なのが、①の要件です。

 

■要件①加害行為=権利侵害があったといえる?
・同性で肉体関係を持つことが、本人(請求者)との関係で加害行為(すなわち不貞)といえるか。
・この同性同士の肉体関係により、本人(請求者)の何らかの権利が侵害されたといえるか(同性カップルの関係が「権利又は法律上保護された利益」といえるか)

が問題です。

 

裁判所は、「内縁関係は婚姻関係に準じるものとして保護されるべき生活関係に当たると解される」ことを前提に、

「同性のカップルであっても、その実態に応じて、一定の法的保護を与える必要性は高いということができる。~同性のカップルであっても、その実態を見て内縁関係と同視できる生活関係にあると認められるものについては、それぞれに内縁関係に準じた法的保護に値する利益が認められ、不法行為法上の保護を受け得ると解するのが相当である。」と判断しました。

 

裁判所の立場ですが、
男女間の婚姻関係では、不貞は「婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益(これが権利)←を侵害する行為(←不貞が加害行為)」とされます(最判平成8年3月26日)。

そして男女間の恋愛関係の場合、婚姻に至っていない内縁関係の場合にも、その関係が保護され、不貞を行った恋人又は恋人と不貞関係を行った第三者に対し、慰謝料を請求できる場合があります。

内縁関係が保護される理由ですが、判例は「いわゆる内縁は、婚姻の届出を欠くがゆえに、法律上の婚姻ということはできないが、男女が相協力して夫婦としての生活を営む結合という点においては、婚姻関係と異なるものではなく、これを婚姻に準ずる関係というのは妨げない」(最判昭和33年4月11日)としています。


つまり婚姻していなくても夫婦といえるような実質的な共同生活を営んでいる場合には、その内縁関係も法律上保護されるべき権利(利益)と判断しています。

今回の事案は、同性カップルの関係においても、男女の内縁関係と同じように、

内縁関係と同視できる生活関係がある場合には、保護されるべき利益になり得るか??という点について、なり得ると判断しました。


※ただし、現行法上、婚姻が男女に限られていることからすると(筆者注:法律で同性婚が認められていない現状からすると)、同性婚を内縁関係(事実婚)そのものと見ることはできないとしています。

 

同性カップル間でも内縁関係と同視できる生活関係にある場合
⇒内縁関係に準じた法的保護に値する利益あり。

このような生活関係にある場合に、不貞を行った場合、不貞は加害行為として
本人の内縁関係に準じた法的保護に値する利益を侵害したといえる。

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■では、内縁関係と同視できる生活関係にあったか
これについては以下の事実関係を裁判所は重視しました。
★共同生活の期間(裁判例の事案は7年)
同性婚が認められているアメリカのニューヨーク州で婚姻登録証明書を取得
★日本で結婚式、披露宴を行った
★二人の関係を周囲の親しい人に明らかにしていた(カミングアウト)
★二人(将来的には二人の子)が住むためのマンションの購入を進めた。
★二人の間で育てる子を妊娠すべく第三者から精子提供を受けた。
男女間の婚姻と何ら変わらない実態を有しているということができ内縁関係と同視できる生活関係にあったと認められることができる。

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※共同生活イメージ

 

■裁判例の射程
判例と同じように、
・内縁関係と同視できる生活関係にある
・パートナーが不貞を行った
事実関係にあり、それにより関係が破綻したと言える場合には、②損害、③因果関係、④パートナー及びパートナーと不貞をした第三者の故意過失が認められる限り、慰謝料請求ができる可能性があります。
なお本裁判は原告及び被告共に控訴しており、高裁判決が3月4日に出るようです。
東京高裁においても、同性カップルの関係が内縁関係と同視できる生活関係にある場合は保護されるべき利益に当たるとの判断を維持されることが望まれます。

 

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