【東京港区、制服自由の条例制定へ】

東京港区、制服自由の条例制定へ】

 

こんにちは。レイ法律事務所弁護士の森伸恵です。

東京都港区が、1月31日、トランスジェンダーなど性的少数者の人が身体の性別にかかわらず、職場や学校で制服などを自由に選択できるよう、男女平等参画条例の改正案を2月に区議会に提出することを明らかにしました。

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「東京都港区は、トランスジェンダーなど性的少数者(LGBT)が身体の性別にかかわらず職場や学校で制服などを自由に選択できるよう、男女平等参画条例を改正する方針を固めた。区によると、性別にかかわらず、服装などの自由を保障することを条例に盛り込むのは全国初という。四月の実施を目指す。」東京新聞1月5日朝刊
https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202001/CK2020010502000116.html

 
今日はこの条例案の内容や影響について見ていきましょう。
この改正条例案は、対象が「港区区民と港区で働くすべての人」で、トランスジェンダーなどの性的少数者の学生は、区立中学十校などで自分の望むズボンやスカート(制服)を選べる、社会人の人は、職場で性別の違いによる制服などを強制されないとするものです。

 

■対象 
まずこの条例の対象は、LGBTの人全ての人ではなく、原則トランスジェンダー(身体は男性で心は女性、身体は女性で心は男性)の人であることを確認しましょう。
ゲイ、レズビアンバイセクシュアルの方等が必ずしも対象に含まれるわけではありません。
※しかしトランスジェンダー以外の人でも自分の身体の性別に沿って指定された制服を着ることに違和感を感じる方もいますので、対象に含まれることもあります。

 

条例案の良い点
以下、この条例案の良い点をピックアップしてみました。


服装を自分で選ぶことができる選択肢を得られる。(LGBTとは関係なしに)
特に中学生、高校生の時期は、例えば、身体も心も女性だけど、スカートは履きたくないという女子生徒等もいるものです。


トランスジェンダーにとっては嬉しい。
当事者の方から「中学に入り指定の制服を着ることになった時、自分は男なのにセーラー服とスカートを3年間着なくちゃならず苦痛で苦痛で仕方なかった」といったことを聞いたこともありますので、トランスジェンダーの人が性自認に沿った制服を着用できるのは喜ばしいことです。


区内で、性自認に沿った服装や出勤や通学することを、学校側や企業側から指摘や注意されなくなる。


・港区が制定しようとしている「(仮称)みなとマリアージュ」(※性的マイノリティの人を対象として、性的指向性自認にかかわらず、誰もが人生を共にしたい人と家族として暮らすことができるというもの。同性間でも異性間でも利用できる。外国籍の人も利用できる。)とともに、港区が性的少数者に対して寛大な地域として進んでいく。

 

条例案の具体化、射程
では、この条例が制定された際に実際に起こり得ることを考えてみましょう。


・服装に伴う、トイレや更衣室の使用に関しての言及がない?
⇒例えば、身体は男性、性自認は女性のトランスジェンダーの人が女性の制服を着るようになった場合、女子トイレや女子更衣室は使えるようになるのでしょうか?
なお、港区内公立学校の「誰でもトイレ」普及率は10%以下 となっています。
文科省
https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/10/30/1410580_002_1.pdf


・同じく、水着や課外授業の際の服装についてはどうなる?

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・もしトイレ法のような校則ができた場合、当事者には逃げ場がなくなることがあり得るおそれ?
Qトイレ法とは??
2015年、アメリカのノースカロライナ州でトイレ法という法律が制定されましたが、2018年に否決されました。
このトイレ法は、「女性や子どものプライバシーを守るため」として、出生時の性別に沿ったトイレ使用を求めるものでした。
港区の学校でも、他の生徒への影響や盗撮の心配を防止するといったことを考慮し、トイレ法のような校則ができれば、制服は好きに選べてもトイレは身体の性別に沿ったものを使うことを強要されるということもあり得ますので、個別に判断する必要があります。

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この条例は性自認に沿った制服を着用する=トランスジェンダーであることをカミングアウトすることになる?
⇒中学校や高校に入学する際、近くの指定学童用品店等で、その学校指定の制服やジャージを購入するのが一般的な流れですが、例えば、FTMの人が「女子の制服のスカートを着ることはできない。ズボンを履く。」と決めた際、この性自認に沿ったズボンを履くことで事実上、自分の姿(服装)を持ってFTMであることをカミングアウトすることになります。
 しかし、トランスジェンダーの人の中には、自分がFTMやMTFであることは知られたくない、だから性自認に沿った服装ではなく、身体の性別に沿った服装をし続ける人もいます。
 ファッション業界ではジェンダーレスの服装が話題にのぼるようになっています。
 港区の制服自由化も、表現の自由として生徒や社会人が自由に着た服を着られるようにするという風に制服自由化の趣旨が変わっていけば、カミングアウトに抵抗があるトランスジェンダーの人も性自認に沿った服装を着用しやすくなるかもしれませんね。


 もっとも、港区の男女平等参画条例の一部を改正する条例案を見てみますと、「何人も、正当な理由がない限り、他人の性別表現を妨げてはならない。」とあり、港区のほうでも、表現の自由の一環としても検討してくれている可能性もあります。

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上記のように、制服自由化の趣旨制服を自由に選べるようになった後、起こり得ることについては事前に具体的に検討しておき、港区から教育委員会や各学校に対して、分かりやすく判断方針を説明しておく必要がありますね。
現場が判断に困らないよう、条例制定と同時に指針を各学校に配布しておくことも良いかもしれませんね。

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制服自由化に心から賛同しておりますので、楽しく生活できる人が増えるよう(トランスジェンダーの人に限らず自分が心地よく感じる制服・服装で生活できることは大切なことです。)願っております。

https://rei-law.com/practice/lgbt